別冊イチカレイカ

夏短すぎ問題

映画見た

以下を要約すると「言の葉の庭見てあああああってなりました」です。


  雨は降らない

 カーテンを開けるととても良い天気だったので、風邪をひくことにした。定期の券面が示す矢印とは逆の方向の各駅停車。乗降客が疎らになるにつれ、車窓から見えるビルは少なく、低くなってゆく。
 適当に降り立った駅前は静かだった。数軒の個人商店はまだシャッターを開けていない。もうずっと閉まったままなのかもしれない。老夫婦がレジを打つコンビニで、ビールとアイスキャンディを買った。
 しばらく歩けば汗ばむ陽気に、アイスのフィルムと体裁をゴミ箱に捨てる。不意に目にとまった町内地図は、避難場所として高台の公園を示していた。ハズレの棒を囓りながら緩やかな坂道を登る。赤や緑に塗られた遊具に辿り着くまでにはしばらくかかった。
 楠の影に設置されたベンチに座ると海が見えた。ぬるくなった缶のプルタブを起こして、半分ほど一気に呷った。はー、だるい。一人声に出し、一人一頻り笑った。水面は凪いで空を映し、一隻の船を浮かべている。明日の天気、先週の会議、来月の同僚の結婚式、去年の今頃いた人。何もかも、本当にどうでもいいことだった。沖合の影は遠すぎて、どちらに向かって進んでいるのかすら分からない。